相続税の申告期限と手順・申告書の作成方法

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故人の遺産を受け継いだ後は、「相続税の申告をしなければならない」と考える人も多いかと思います。しかし遺産を受け継いだ人全員が行う必要は無く、一定額以上の遺産がある場合のみです。

本ページでは相続税を申告しなければならない人向けに、いつまでに申告すべきなのかの申告期限や詳しい申告手順・また、申告書の作成方法を詳しく解説していきます。

この記事の監修税理士
所属 公認会計士・税理士 大橋誠一事務所
氏名 大橋誠一
登録番号 86392
URL https://www.trusty-board.jp/
  1. 相続税を申告すべき人
  2. 相続税の申告書提出は相続開始があった翌日から10ヶ月目の日以内に行う
    1. 申告(書類を提出)する場所
    2. 10ヶ月以内の申告期限に間に合わなかった!ペナルティはある?
  3. 相続税の申告手順(手続き)を分かりやすく解説
    1. 手順①[死亡後7日以内]死亡届を提出する
    2. 手順②[2ヶ月以内目途]相続財産と相続人を確定/被相続人の戸籍謄本も取り寄せる
    3. 手順③[3ヶ月以内]相続の方法を決定する
    4. 手順④[4ヶ月以内]故人の所得税の準確定申告を行う※必要な人のみ
    5. 手順⑤[4~9ヶ月以内]相続人全員で遺産をどのように分けるか話し合う(遺産分割協議)
    6. 手順⑥[10ヶ月以内]税務署に相続税の申告書を提出して納税する
    7. 手順⑦[相続税を納税後]相続財産(土地や口座など遺産)の名義変更を行う
  4. 相続税申告書の作成方法
    1. STEP①財産や債務・葬式費用に関する書類を作成する(第9表~第15表)
    2. STEP②相続税の申告書(第1表)と相続税総額の計算書(第2表)を作成する
    3. STEP③税額控除の計算書(第4表~第8表)を作成する
    4. 必要書類のダウンロードや記載方法は国税庁のページをチェック!
  5. 相続税を申告する際に必要な書類一覧
    1. 一般的に必要な書類
  6. 相続税の申告・書類作成は税理士に依頼する方が確実!
    1. 税理士に依頼するメリットは多い
  7. まとめ

相続税を申告すべき人

相続税の申告は、亡くなった人から受け継いだ遺産が一定額以上ある場合に必ず行うべきことです。

この一定額以上というのは金額が決まっており、令和3年現在は遺産総額が

3,000万円+(600万円×法定相続人の数)の金額以上であれば申告が必要です。

法定相続人の数が妻と子ども2人の合計3人の場合

3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円

4,800万円以上の財産があれば(相続税の)申告義務が生じる。

参考ページ:国税庁No.4152相続税の計算

【3,000万円+(600万円×法定相続人の数)】は基礎控除額といって非課税の枠で、遺産の総額がこの金額に満たなければ‥0円もしくはマイナスの額になるので相続税の申告自体が不要です。

実際の税額を出すには速算表なども用いて、順に計算していくと求めることができます。詳しい計算方法などは、同サイト内に掲載している『相続税の計算方法を分かりやすく解説!』の記事を参考にしてください。

相続税の申告書提出は相続開始があった翌日から10ヶ月目の日以内に行う

相続開始があった翌日=亡くなったという事実を知った日の翌日、の意味です。

孤独死の場合や相続人が外国に住んでいたりなどすると、知らせが遅れたりもするかもしれません。亡くなった事実を知った日からのカウントなので、いつ知ったかをきちんと記録しておく必要があります。

8月1日に亡くなって8月3日に知ったのであれば、翌日の8月4日から10か月目の6月3日までが申告書を提出する期限。

もし期限日が土曜・日曜・祝日ならば、次の平日が期限日となる。

国税庁の、相続税の申告手続きこちらのページにもしっかり明記されています。この期日内には申告(書類の提出)のみならず、相続税の納税も完了しなければなりません。

申告(書類を提出)する場所

亡くなった人(被相続人)の居住地を管轄する税務署に、申告・書類を提出してください。遺された人たちと同じ場所に住んでいるのならば問題無いですが、別の場所や遠方の場合は間違えやすいので要注意です。

10ヶ月以内の申告期限に間に合わなかった!ペナルティはある?

相続税の申告は10ヶ月以内に行わなければなりませんが、もし期限内に申告できていない・相続税の支払いもできなければ‥ペナルティが課せられます。

  • 申告書の提出が遅れた場合‥無申告加算税の支払い(50万円まで15%・50万円を超える分は20%ですが、税務調査前であれば軽減されます)期限に間に合わないと、無申告加算税を支払う他に各種特例も使えなくなってしまうので注意しましょう。
  • 相続税の支払いが遅れた場合‥延滞税 参考ページ:延滞税について

このようにそれぞれ別のペナルティがあるので、1つ1つ確実に手続きしながらも効率的に準備していく必要があります。

相続税の申告手順(手続き)を分かりやすく解説

申告期限が10ヶ月と聞くと時間的な余裕があるようにも思えますが、相続税を申告していく手順は複雑です。まだ時間がある‥とゆっくり構えてしまうと、あっという間に時間が過ぎて期限間近ということもあります。

本章では、申告手順・どのように手続きすべきかを(亡くなってからの期限ごとに)1つずつ分かりやすく説明していきます。手際よく少しでもスムーズに申告するために、一連の流れを確認し頭に入れておきましょう。

手順①[死亡後7日以内]死亡届を提出する

  • 死亡してから7日以内に死亡届を提出する
  • 死亡届は市町村役場に提出

死亡後に医師から死亡診断書を受け取れば、死亡届を記載して提出しましょう。死亡届と死亡診断書は一枚つづりなので、死亡診断書をもらい次第死亡届に記載します。

提出期限は死亡してから7日以内、提出場所は市町村役場です。この死亡届を提出することで、税務署には死亡した旨(情報)が自動的に通知されます。

Point!死亡届・死亡診断書は必ずコピーする

死亡届を書いたら、提出する前に必ずコピーしてください。死亡診断書そのものは一通のみで、コピーせずに提出すると手元には残りません。あらゆる手続きで必要になるので、必ずコピーすることを覚えておいてください。

死亡届は提出前に必ずコピーをとる

手順②[2ヶ月以内目途]相続財産と相続人を確定/被相続人の戸籍謄本も取り寄せる

  • 死亡してから2ヶ月以内目途に相続財産と相続人を確定させる
  • 被相続人の戸籍標本を取り寄せる
    ※遠方の場合は郵送での取り寄せも可能

次に行うことは、死亡してから2ヶ月以内を目途に相続する財産と相続する人を確定させます。相続する人を確定するには、被相続人(亡くなった人)の戸籍謄本を取り寄せるのが確実です。

相続税申告の際に被相続人の戸籍謄本は必要なので、生前から相続する人が明確に決まっていたとしても入手しましょう。遠方であれば定額小為替等を同封して、郵送での取り寄せが可能です。

手順③[3ヶ月以内]相続の方法を決定する

  • 死亡してから3ヶ月以内に相続方法を決める
  • 相続方法は「単純承認」「限定承認」「相続放棄」のいずれか

相続の方法には、すべての財産を無条件に引き継ぐ「単純承認」・プラスの財産からマイナスの財産(借金等)を引いた分だけ引き継ぐ「限定承認」・財産を引き継がない「相続放棄」の3種類あります

どの方法で相続するのか、相続人それぞれで決めていかなければなりません。一般的には単純承認が多いです。ここまで死亡してから3ヶ月以内に行うことで、限定承認・相続放棄する場合は「3か月以内に手続き」してください。

ちなみに3か月以内に限定承認・相続放棄いずれも手続きしなければ、自動的に“単純承認”したと判断されますが、特段の事情があれば家庭裁判所から期間の伸長が許可される場合があります。

手順④[4ヶ月以内]故人の所得税の準確定申告を行う※必要な人のみ

  • 死亡して4ヶ月以内に故人に変わり相続人が確定申告(準確定申告)を行う
  • 生前に確定申告をしていなければ通常は準確定申告は不要

亡くなった人の確定申告を、相続人が代わりに行うことを“準確定申告”と言います。生前に故人が事業所得などの確定申告を行なっていれば、<その年の1月1日~亡くなった日までの所得>を死亡してから4ヶ月以内に申告しなければなりません。

個人事業主など自身で確定申告を行っていたのであれば忘れずに、準確定申告してください。参考ページ:納税者が死亡した時の確定申告

年金生活者など生前に確定申告していない故人であれば、通常はこの手続きは不要ですが、場合によっては準確定申告をした方が有利(還付)になる場合があります。

手順⑤[4~9ヶ月以内]相続人全員で遺産をどのように分けるか話し合う(遺産分割協議)

  • 4〜9ヶ月以内に相続人全員で遺産分割協議をする
  • 遺言書がある場合は、遺言書に基づき財産分配する

手順②で確定した相続人全員が集まって、遺産をどのように・誰が何を相続するのかを話し合います。これを遺産分割協議と言います。話し合った結果を、遺産分割協議書にまとめましょう。

しかしこれは遺言書が無い場合のことで、遺言書があればそれに基づき遺留分の侵害分の有無も確認しつつ‥財産を分配していきます。

手順⑥[10ヶ月以内]税務署に相続税の申告書を提出して納税する

  • 10ヶ月以内に相続税の申告書を提出する
  • 提出場所は亡くなった人が住んでいた管轄税務署

ここまで済めば、後は協議した結果を元に相続税の申告書を作成して提出します。場所は第1章の申告する場所でも記載したように、亡くなった人が住んでいた管轄税務署です。書類の提出だけでなく、然るべき税額を相続税として忘れずに納税しましょう。

手順⑦[相続税を納税後]相続財産(土地や口座など遺産)の名義変更を行う

  • 相続税の納税を行う
  • 相続財産の名義変更を行う

最後に、遺言書や手順⑤で作成した遺産分割協議書に基づいて相続した遺産の名義変更を随時行なっていきます。預金口座等は金融機関に行けば比較的簡単に変更できますが、土地を含む不動産などは少し複雑な手続きです。

素人が行うには難しいことも多いので、専門家である司法書士に依頼すると良いでしょう。

Point!土地の名義変更には期限が無い

土地の名義変更はいつまでに行うべきかという期限は、令和3年現在は明確には定められていません。遺産分割協議後で決定し次第、というのがオーソドックスです。

しかし、できればその年の12月31日までに行う方が良いでしょう。固定資産税は、1月1日時点での所有者に請求されるため、12月31日までに行わないと故人名義で翌年度分の課税通知が送られてくるためです。

土地の名義変更に期限はないが、その年の12月31日までに行うのが良い。

相続税申告書の作成方法

相続税の申告書は1種類だけでなく、相続した財産の種類や適用したい控除等によって提出する必要な書類が異なります。ですので、相続税を申告する人全員が同じ書類を用意して提出するわけでは無いということです。

この章では国税庁のホームページ内でも案内されているごく一般的な例に基づいて、用意・作成すべき書類を記載する順に説明していきます。大きく3つのステップに分けることができ、ステップごとに必要な書類を紹介します。

STEP①財産や債務・葬式費用に関する書類を作成する(第9表~第15表)

STEP①では、7種類の書類を用意して記載していきます。一番多いので、確認しつつ順番に作成していきましょう。

  • 生命保険金などの明細書(第9表)
  • 退職手当金などの明細書(第10表)
  • 小規模宅地等についての計算書(第11・11の2表の付表1~4)
  • 相続税がかかる財産の明細書(第11表)
  • 債務及び葬式費用の明細書(第13表)
  • 相続開始前3年以内の贈与財産等(第14表)
  • 相続財産の種類別価額表(第15表)

STEP②相続税の申告書(第1表)と相続税総額の計算書(第2表)を作成する

STEP②では、相続税の申告書と相続税総額の計算書の2種類に記載します。

  • 相続税の申告書(第1表)
  • 相続税総額の計算書(第2表)

なお、第1表の下半分は、STEP③の税額計算の結果を記載しますので、現時点では空白になります。

STEP③税額控除の計算書(第4表~第8表)を作成する

最後3つめのSTEPでは、以下5種類の書類に記載していきます。それぞれの税額計算の結果をSTEP②の第1表の下半分に転記して納付税額が決まります。

  • 相続税額の加算金額の計算書(第4表)
  • 配偶者の税額軽減額の計算書(第5表)
  • 未成年控除額・障害者控除額の計算書(第6表)
  • 相次相続控除額の計算書(第7表)
  • 外国税額控除額と農地等納税猶予額の計算書(第8表)

必要書類のダウンロードや記載方法は国税庁のページをチェック!

必要な書類は相続税の申告書等の様式一覧こちらからダウンロードし印刷してください。

このように一般的な例であっても、ざっと数えるだけで14種類もの書類が必要です。しかもその書類に合わせて、確実に記載し作成して行かなければなりません。

それぞれ書類ごとの記載方法は相続税の申告書の記載例こちらに分かりやすく掲載されていたので、見ながら確実に書いていただければと思います。

相続税を申告する際に必要な書類一覧

前章で説明した申告書以外にも、様々な書類を必要に応じて用意しなければなりません。一覧でまとめましたので、10ヶ月の申告期限内に揃えましょう。

一般的に必要な書類

  • 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで連続したもの)
  • 被相続人の死亡診断書のコピー
  • 被相続人の住民票の除票
  • 遺言書または遺産分割協議書(どちらか一方でOK)
  • 相続人全員の戸籍謄本と住民票
  • 相続人全員の印鑑証明書

特殊な例では無くあくまでも一般的に必要とされているのが、上記の書類です。書類がすべてであり、確実にそろえましょう。

戸籍謄本については申告手順②でも記載しましたが、遠方の場合は郵送での取り寄せです。比較的早く返送してくれる自治体もありますが、遅いところは1週間以上かかります。早めに依頼・郵送しておいて損は無いので、できるだけ早くに行ないましょう。

相続税の申告・書類作成は税理士に依頼する方が確実!

相続税の申告手順や書類の作成方法について記載しましたが、本当に複雑で手間がかかります。ですが、自分でする分には特別な資格などは要りませんし‥やろうと思えば『自分で申告・作成することは可能』です。

しかしこれだけのことを抜けなく且つミスなく行なうというのは、日常生活の合間に行う以上は(自分一人でやるのには)限界が生じます。ですので、費用は掛かるもののやはり税の専門家である税理士に依頼する方がおすすめです。

相続税の書類作成・申告は自分でも可能だが、複雑で手間もかかるので税理士に依頼するのがおすすめ。

税理士に依頼するメリットは多い

税理士に依頼するメリットはたくさんあります。時間・手間も節約できますし、なんといっても確実に準備できるので結果的に要する時間も短縮できる可能性も高いです。

自分で行なうと、どうしても計算ミスなども起こりやすく修正申告となるとさらにややこしい手続きを踏まなければなりません。

税理士に任せることで、節税できるところはしっかりと節税することも可能です。また税理士が関与していることで正確性も担保されて、税務調査に該当することも少なくなります。

税理士に支払う費用は、相続する遺産の額によって変わるところがほとんどです。相続税に強い税理士・事務所を選び、無料相談などを利用してそれぞれ比較して決めましょう。

メリット
  • 税理士に依頼すれば確実で時間や手間の節約になる
  • 税金に詳しいため節税になる
  • 税務調査に該当することも少なく、対応してくれる税理士もいる

まとめ

相続税は、申告手続きや申告書の作成・必要書類の準備など本当にやるべきことが多い税金です。

税理士への依頼は少し敷居が高いと思うかもしれませんが、昔と違って今は初回無料相談を実施している事務所が大半です。これを利用すれば契約する前に実際に会って話ができ、自分に合うかどうかの判断材料にもなります。

税務署は書類の書き方は教えてくれても、相続税の申告そのものの手伝いは行ってくれません。相続税の申告は自分一人で抱えずに、税理士に相談して協力・アドバイスをもらいながら二人三脚でスムーズに進めていきましょう。

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