「監査法人 転職 タイミング」
繁忙期の終わりに一度考えて、次の期が始まると忘れる。その繰り返しの何周目かで、この言葉を検索したのではないでしょうか。
ひのです。社会保険労務士をしながら、本業では会社の管理部門で給与計算と人件費の管理を担当しています。
僕は公認会計士ではありませんし、監査法人で働いた経験もありません。

ただ、コンサルやFASに来てもらう側なら、何度も経験しています。M&Aのデューデリジェンスで来たチーム、決算早期化のプロジェクトで入ってもらった会計士。契約書を交わし、単価を見て、請求書に判子を押すのが僕の仕事でした。
会計士の方がコンサルへ移ると、その人の1時間にいくらの値段が付くのか。発注する側は、その金額に何を期待しているのか。
外から見ていると分かりにくいこの部分を、支払う側として何年も見てきました。
あわせて、退職の時期を決めるところから最終給与の計算までを実務でやってきたので、いつ動くのが損をしないかも具体的にお伝えできます。
【この記事でわかること】
・監査法人から転職する人が集中する年次と、その理由
・年次別に、市場からの評価がどう変わるのか
・季節ごとの動きやすさと、内定から入社までの逆算カレンダー
・行き先6方向それぞれで、最適なタイミングが違う理由
・コンサルとFASの違い、そして発注する側から見たコンサルの現実
・タイミングを逃すと何が起きるか、動く前の3か月でやること

決して転職を急かす記事ではありません。いま動かないと決めるのも重要です。
先にひとつお伝えしたいことがあります。
転職のタイミングの正解は働いた年数や季節だけでは決まりません。公認会計士であるあなたの経歴にいまいくらの提示が出るかによって、待つべきか動くべきかが変わるからです。
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この記事の執筆者の信頼性

僕はひのと言います。
【主な保有資格】
社会保険労務士(全国社会保険労務士会連合会 登録)
ファイナンシャルプランナー2級(日本FP協会 登録)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | ひの |
| 保有資格 | 社会保険労務士(令和元年合格・3回受験)/FP2級 |
| 本業 | 事業会社の管理部門。給与計算・社会保険事務・人件費管理を担当 |
| コンサルとの関わり | デューデリジェンスや決算早期化などで、FAS・コンサルに発注して一緒に進める側 |
| 監査との関わり | 被監査側として決算期の資料提出と往査対応を担当 |
| 退職との関わり | 退職日の調整から社会保険の資格喪失、離職票の発行までを担当 |
監査法人の中の評価や査定、コンサルファームの内部の話は、ここではしません。

コンサルの単価表を見たことがある管理部門の人間は、そう多くないはずです。あの数字を知っていると、会計士がコンサルへ移る意味がまるで違って見えてきます。
監査法人から転職する人が集中する節目

公認会計士の職務経歴書を見ていると、転職に動いた節目が驚くほど似ています。
この3つに共通しているのは、どれも本人の不満が限界に達した瞬間ではない、ということです。むしろ逆で、外から評価が届きはじめた瞬間に人は動きます。
・公認会計士の資格が完成した
・現場を任されるようになった
・マネージャーなどの上の働き方が見えた。
いずれも、選択肢が増えたことがきっかけです。

辞めたい気持ちが強い時期と、実際に動ける時期は別物なんですよね。前者は繁忙期の最中で、後者はその半年後だったりします。
公認会計士は市場からの評価はどう変わるか?
採用する側から見ると、監査法人出身者の読まれ方は年次でかなり変わります。
監査法人の役職別 年収レンジ(BIG4・目安)
出典:マンパワーグループ公開情報をもとに当サイトで作成(あずさ・トーマツ・PwC・EY新日本の各水準の幅。いずれも目安)
この階段の、どこで監査法人から転職するか。それが年収の増減だけでなく、次の職場で任される仕事まで決めてしまいます。
監査法人1〜2年目 ~ポテンシャルで見られる時期~
この時期に動く人は、実務よりも人柄と伸びしろで判断されます。
監査の型がまだ身についていないぶん、事業会社に入っても即戦力にはなりません。そのかわり、その会社のやり方に素直に馴染みやすいという評価をされます。
監査法人3年目前後 ~資格が完成して、見え方が変わる~
修了考査を終えて公認会計士として登録されると、書類の通り方が明確に変わります。
「公認会計士試験に受かった人」から「資格を持っている人」になるからです。求人の応募条件に公認会計士と書かれているものが、この瞬間から全部対象になります。
動く人がいちばん多いのがここで、事業会社もFASもコンサルも、この層を採りにきています。
監査法人4〜6年目 ~いちばん高く売れる時期~
現場を一人で回せて、まだマネジメントに寄り切っていない。この状態が、転職市場ではもっとも評価されます。
事業会社なら決算を任せられるし、FASやコンサルならプロジェクトの実務を回せる。採る側からすると、教育コストがほとんどかからない層です。

採用の会議で「この人ならすぐ回せる」と言われるのが、だいたいこの年次の方でした。逆に言うと、ここを過ぎると求められるものが変わります。
監査法人7年目以降 ~マネジメントを買われる時期~
マネージャーの打診が見えてくると、評価の軸がプレイヤーからマネジメントに移ります。
事業会社なら課長やマネージャー候補、コンサルならマネージャー採用。ポジションは上がりますが、募集の数そのものが減るので、条件の合う求人が出るまで待つ期間が長くなります。
自分がどの段階にいて、いまどんな求人が出ているのか。これは求人票を並べてみないと分かりません。年次が変われば見える求人も変わるので、いまの時点で一度確かめておくと判断が早くなります。
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季節で変わる、公認会計士の転職活動のしやすさ

次は、転職しやすい季節についてです。
監査法人の一年は決算スケジュールと連動しているので、動きやすい月とそうでない月がはっきり分かれます。
監査法人にいる会計士から見た、月別の動きやすさ
色が濃い赤ほど動きにくく、緑ほど動きやすい時期。当サイトが実務の感覚をもとに作成(目安)
赤い4月と5月は、言うまでもなく期末監査の山です。この時期に活動を始めても面談の日程が組めませんし、退職を切り出せば引き継ぎで揉めます。
緑の6月から9月が本命です。監査報告書が出て一区切りつき、退職者も多いので前例があります。

監査法人側も覚悟をしている場合もありますね。
事業会社側の採用が動く時期も知っておく
見落とされがちなのが、採用する会社側の都合です。
| 時期 | 事業会社の採用の動き | 会計士から見た意味 |
|---|---|---|
| 1月〜3月 | 新年度に向けた増員枠が決まる | 4月入社の枠が出るが、応募は前年末から |
| 4月〜6月 | 新年度の体制が固まり、欠員が見えてくる | 急ぎの募集が出やすい |
| 7月〜9月 | 下期に向けた採用が動く | 監査法人側も動きやすく、いちばん噛み合う |
| 10月〜12月 | 年内入社と1月入社の枠 | 年末調整と重なり面接が入りにくい |

人件費の予算は年度で組むので、期の変わり目に枠が動きます。7月から9月は、出る側と採る側の都合がいちばん揃う時期なんです。
入社月ごとに、狙い方が変わる
| 入社月 | 枠が出る背景 | 動き出す時期 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 4月 | 新年度の増員枠。人事異動と同時 | 前年11月〜1月 | 監査法人側が期中手続で忙しい |
| 7月 | 上期の欠員補充。決算が落ち着いた直後 | 3月〜4月 | 退職の申し出が繁忙期と重なる |
| 10月 | 下期に向けた増員。いちばん噛み合う | 6月〜7月 | 退職者が集中し社内調整が混む |
| 1月 | 年内の欠員補充と新年度の前倒し | 9月〜10月 | 年末調整期で面接が入りにくい |
この表でいちばん現実的なのは10月入社です。6月から7月に動き出せば、監査法人側は繁忙期が明けていて、事業会社側は下期の枠が動いています。
4月入社は枠こそ多いものの、動き出しが期中手続の時期と重なるので、面談の日程を組むのに苦労します。

人事異動の内示が出るのは、たいてい年明けです。そこで空いた穴を埋める採用が3月から動くので、実は5月や6月入社の急ぎの募集も出ます。あれは狙い目ですよ。
公認会計士が内定から入社までを逆算するカレンダー
動き出す月を決めるには、入社したい月から逆算するのがいちばん確実です。7月入社を狙う場合で考えてみたいと思います。
| やること | 必要な期間 | 7月入社を狙う場合 |
|---|---|---|
| 求人を見て条件を確かめる | 2〜4週間 | 3月ごろから |
| 職務経歴書を整える | 1〜2週間 | 4月上旬 |
| 応募して面接を受ける | 3〜6週間 | 4月中旬〜5月 |
| 内定と条件交渉 | 1〜2週間 | 5月下旬 |
| 退職を切り出して引き継ぎ | 1〜2か月 | 6月上旬に申し出 |
| 有給を消化して退職 | 残日数による | 6月下旬 |
合計すると、動き始めてから入社まで3か月から4か月かかります。
つまり6月に「動こう」と思った時点で、実際に入社できるのは9月か10月です。ここを知らないまま繁忙期明けに動き出すと、想定より半年ずれます。

退職の申し出を受ける側から言うと、2か月前に言ってもらえると本当に助かります。1か月を切ると、引き継ぎと有給消化のどちらかが必ず削られるんですよね。
この逆算表を見て「思ったより時間がかかる」と感じたなら、求人を見るところだけでも先に始めてしまうのが早いです。応募も退職もせずに進められる部分なので、繁忙期の合間でも動かせます。
公認会計士は転職先で、最適なタイミングが違う

同じ「監査法人を出る」でも、どこへ転職するかで有利な年次やタイミングが変わります。
| 年次 | 事業会社 | FAS | コンサル | 内部監査 | 他の監査法人 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1〜2年目 | △ | △ | △ | × | ◎ |
| 3年目(修了考査後) | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ◎ |
| 4〜6年目 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ |
| 7〜9年目 | ○ | ○ | △ | ◎ | △ |
| 10年目以上 | △ (管理職枠) | △ | △ | ◎ | × |
| 行き先 | 有利な年次 | 動きやすい時期 | 年収の目安 |
|---|---|---|---|
| 事業会社の経理・財務・経営企画 | 3〜6年目 | 7〜9月 | 600〜1,000万円 |
| FAS(財務アドバイザリー) | 3〜6年目 | 通年(案件次第) | 700〜1,200万円 |
| コンサルティングファーム | 3〜7年目 | 通年(期初に多い) | 700〜1,200万円 |
| 内部監査 | 4年目以降。40代でも可 | 7〜9月 | 600〜900万円 |
| 他の監査法人・中小監査法人 | 2年目以降 | 6〜8月 | 現職+α |
| 独立・開業 | 修了考査後、実務5年以上が目安 | 時期を選ばない | 案件次第 |
行き先別 年収レンジの重なり方(目安)
出典:マンパワーグループおよび転職エージェント各社の公開情報をもとに当サイトで作成(目安)
この図で見てほしいのは、4つのレンジがほとんど重なっていることです。
どこへ行っても年収は大きくは変わりません。差が出るのはレンジの上端に届くかどうかで、それを決めるのは行き先ではなく、入るポジションと入る時期です。

残るか出るかで年収が決まると思っている人が多いのですが、実際には同じ帯の中の移動なんですよね。
だから金額よりも、何をして過ごすかで選んだほうが後悔しません。
転職先の求人を同じ画面に並べてみると、この重なり方が一目で分かります。
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公認会計士が事業会社へ移るなら、いつが有利か
いちばん人数が多い行き先です。狙うべきは3年目から6年目、時期は7月から9月。
理由は2つあります。
・監査対応を巻き取れる人が欲しい会社ほど、決算が落ち着いた時期に採用を動かすから
・期の変わり目に人件費の枠が動くから
です。
4月入社を狙うなら、動き出しは前年の11月
新年度の増員枠は、多くの会社で12月から1月に固まります。
そこに間に合わせるには、前年の11月には求人を見始めている必要があります。
ただしこの時期は監査法人側が期中手続で忙しく、事業会社側も年末調整の真っ最中です。実際には、7月から9月に動いて10月入社を狙うほうが噛み合います。
入社してからの3か月で、評価はだいたい決まる
時期の話をしてきましたが、入ったあとの3か月も同じくらい大事です。
| 時期 | 起きやすいこと | 乗り越え方 |
|---|---|---|
| 1か月目 | 会計の知識は通用するのに、社内システムで止まる | 聞ける相手を1人決めて、まとめて聞く |
| 2か月目 | 数字の裏を取りたいのに、誰に聞けばいいか分からない | 部署ごとの担当者名を自分でメモにする |
| 3か月目 | 初めての月次で、締切と正確さのどちらを取るか迫られる | 先に上長と期日の優先順位を握っておく |
| 4か月目以降 | 監査対応の場面で一気に評価が上がる | ここまで来れば自然に任される |
会計の知識で詰まった人を、僕は見たことがありません。詰まるのはいつも、その会社になじめていないことのほうです。
だから入社の時期を選ぶときは、繁忙期の直前に入らないことも考えてください。決算の真っ最中に入ると、誰も教える余裕がありません。

4月や10月といった期の変わり目の入社が多いのは、配属先に教える余裕があるからでもあります。決算月の直前に入ってしまうと、最初の3か月がまるごと消えてしまうんですよね。
事業会社に入ったあと何が起きるのかは『会計士が事業会社に転職すると年収は下がる?』の記事に詳しく書いています。

決算を回せる人が一人入るだけで、経理部の残業時間が目に見えて変わります。人件費を見ている側からすると、その効果が読める時期に採りたいんです。
公認会計士がコンサル・FASへ移るなら、いつが有利か

こちらは事業会社と事情が違って、時期より案件の状況に左右されます。
プロジェクトが動き出すタイミングで人を増やすので、募集は通年で出たり止まったりします。期初にあたる時期にまとまって出ることが多い、という程度の傾向です。
狙うのは3年目から7年目
求められるのは、監査で身につけた財務諸表の読解力と、期日に対する規律です。
1〜2年目だと調書の作り方までは身についていても、論点を自分で立てられません。逆に8年目を超えると、コンサル側では未経験のマネージャー候補という扱いになり、条件の折り合いが難しくなります。
未経験からのマネージャー採用は、狭き門になる
8年目を超えてコンサルへ移る場合、コンサル未経験のマネージャー候補という扱いになります。
この枠は数が少なく、求められるものも変わります。プロジェクトを回した経験そのものより、チームを持って数字に責任を負えるかを見られるからです。
監査法人でマネージャーとしてチームを率いた経験は、ここで効きます。ただし募集が出るタイミングを待つ必要があるので、思い立ってすぐ動ける行き先ではありません。
繁忙期の直後は、実は不利になることがある
5月の直後に慌てて動くと、条件を落としがちです。
心身が消耗した状態で面接に行くと、志望動機が「監査から離れたい」に寄ります。コンサル側はそこを敏感に見ていて、逃げの転職と受け取られると評価が下がります。
山を越えて2か月ほど置いてから動くほうが、同じ人でも通りやすくなります。

採用の場に同席していると、疲れ切って来た人と、整えてから来た人の差は本当にはっきり出ます。話す内容が同じでも、印象がまるで違うんですよね。
会計士の転職先としてのコンサルとFASは何が違うのか
会計士の転職先としてまとめて語られがちですが、中身は別物です。
| FAS(財務アドバイザリー) | コンサルティングファーム | |
|---|---|---|
| 主な仕事 | デューデリジェンス、企業価値評価、財務再生 | 業務改善、システム導入、経営戦略、組織再編 |
| 会計知識の使い方 | 中心にある。会計そのものが商品 | 土台として使う。会計だけでは足りない |
| クライアント接点 | 経営企画やM&A担当と | 事業部門や現場まで含めて幅広く |
| 監査からの距離 | 近い。移行の摩擦が小さい | 遠い。学び直す領域が多い |
| 向いている型 | 数字を深く掘りたい | 会社の動かし方に関わりたい |
| 繁忙の波 | 案件ごとに山が来る | プロジェクト期間中は継続的に重い |
FASは監査の延長線上にあります。会計基準の知識と数字を読む力が、そのまま商品になる世界です。
コンサルはそこから一歩離れます。会計は前提知識であって、売り物は課題を解いて実行させる力になります。
迷ったらFASから、という考え方
監査からいきなりコンサルへ行くと、覚えることが多すぎて最初の1年がきつくなります。
FASを挟むと、会計を軸にしたまま「クライアントに提案する」という働き方に慣れられます。そこからコンサルへ移る人も珍しくありません。

デューデリジェンスで来た会計士の方は、こちらが出した資料の不備を的確に突いてきました。あの技術はそのまま監査で培ったものです。だからFASは、移ってすぐ戦力になれるんですよね。
FASとコンサル、どちらの求人が自分の経歴に合うのか。両方を扱っているエージェントに聞くのがいちばん早いです。
ヒュープロは会計士・管理部門の転職を専門にしていて、事業会社もFASもコンサルも同じ担当者が横断で見てくれます。登録は無料で1分ほどです。
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監査法人のアドバイザリー部門に移るという選択肢
法人を辞めずに、監査以外の仕事に移る道もあります。
BIG4はどこもアドバイザリー部門を持っていて、IT監査、内部統制、財務デューデリジェンス、リスク管理といった領域があります。
| 外のコンサルへ転職 | 法人内のアドバイザリーへ異動 | |
|---|---|---|
| 退職の手続き | 必要 | 不要 |
| 収入の空白 | 発生しうる | なし |
| 修了考査の要件 | 転職先次第で影響 | 影響が出にくい |
| 求められる年次 | 3〜7年目が中心 | 希望を出せる時期は法人による |
| 戻れるか | 監査に戻るのは難しい場合も | 部署異動で戻れることがある |
| 得られる幅 | ファームの看板と裁量 | 監査の看板を保ったまま経験を足せる |
異動なら退職手続きも収入の空白も発生しません。修了考査の要件への影響も出にくいので、まだ公認会計士の資格が完成していない人にはとくに現実的です。
制度があるのに使われていないことも多いので、人事に何が使えるかを聞くところからで十分です。

退職願より先に相談を出す。会社側から見れば、辞められるより異動で残ってもらうほうがずっと得なんです。
人事に相談したせいで評価が下がった人を、僕は見たことがありません。
| 聞かれること | 監査法人の面接 | 事業会社の面接 | コンサル・FASの面接 |
|---|---|---|---|
| 最初の質問 | なぜ当法人か | なぜ当社か、なぜ経理か | なぜ監査を離れるのか |
| 深掘りされる点 | 監査への理解 | 決算のどこまで回せるか | 論点を自分で立てられるか |
| 数字の聞かれ方 | 担当クライアントの規模 | 月次の締め日と件数 | 案件の規模と自分の役割 |
| 懸念されること | 続くかどうか | 事業会社の速度に慣れるか | 正確さより期日を取れるか |
| 刺さる答え方 | 業種への関心 | 入社後1年で引き取れる業務 | 宿題を翌日に返す仕事の仕方 |
僕が発注する側から見た、コンサルという仕事

ここは、会計士向けの記事ではあまり書かれていない部分だと思います。
管理部門にいると、コンサルやFASは一緒に働く仲間ではなく、お金を払って来てもらう相手になります。契約書を交わし、単価を確認し、月末に請求書へ判子を押す。
その立場から見えることを、そのままお伝えします。
あなた(会計士)の1時間には、値段が付く
コンサルの請求は、人月や工数で組まれるのが一般的です。誰が何時間動いたかで金額が決まります。つまり、会議室で黙って座っている1時間にも、こちらはお金を払っています。

これを知ってから、見方が変わりました。同じ会議でも、社員が座っているのと、コンサルの方が座っているのとでは意味が違う。だから発注側は「その時間で何が前に進んだか」を無意識に数えているんです。
発注側が本当に見ているのは、速さと正確度
専門知識の深さは、はじめから期待されています。差が出るのはそこではありません。
監査の成果物は、時間をかけてでも正確であることが求められます。コンサルの成果物は、期日までにクライアントが意思決定できる形になっていることが求められます。
この違いに慣れるまで、多くの人が半年ほどかかっているように見えました。
公認会計士がコンサルに入って強いところ
一方で、監査出身者にしかない強みもはっきりあります。
それは、数字の異常に気づく速さと、複数の会社の内側を見てきた経験です。
うちの決算資料を渡したときに、こちらが説明していない論点を先に指摘してきた方がいました。あれは他社の同じ場面を何度も見てきたからできることで、事業会社育ちのコンサルにはなかなか出せません。

請求書の金額に納得できるかどうかは、この「先に気づいてくれる」があるかどうかで決まります。会計士の方は、そこで勝負できる数少ない職種だと思います。
プロジェクトが始まった1週間で、何が起きているか
発注する側から見ていると、コンサルの最初の1週間はほとんど決まった形をしています。
| 時期 | コンサル側の動き | こちらが見ていること |
|---|---|---|
| 初日 | キックオフ。 論点と進め方の合意。 | この人たちは何を分かっていないかを分かっているか |
| 2〜3日目 | 資料の依頼。 担当者へのヒアリング。 | 依頼の粒度が細かいか、丸投げか |
| 4〜5日目 | 一次的な論点整理の共有 | 宿題の返しが速いか |
| 2週目以降 | 検証と追加ヒアリング | こちらの現場が止まっていないか |
この最初の1週間で、社内の評価はほぼ固まります。
とくに見られているのが、資料依頼の粒度です。「関連資料一式をお願いします」と言ってくる人と、「この勘定科目の補助元帳を、この期間ぶんお願いします」と言ってくる人では、こちらの手間がまるで違います。

監査の往査を受けたことがある人なら、この感覚はすでに持っているはずです。資料依頼が具体的な会計士の方は、コンサルに移ってもたいてい早い段階で信用されていました。
もうひとつ、意外と効くのが議事録です。
会議のあと当日中に論点と宿題が整理されて届くと、それだけで「この人たちは仕事が速い」という印象になります。監査調書を書いてきた人には、難しい作業ではないはずです。
単価を知っておくと、面接での話し方が変わる
自分の時間に値段が付くという感覚を持って面接に行くと、話す内容が変わります。
「監査で何をやってきたか」ではなく、「入ってから何時間でクライアントに何を返せるか」を語れるようになるからです。
コンサルやFASの求人は、募集の背景がプロジェクト単位で動きます。いま何の案件で人を探しているのかを知っているのは、間に立っているエージェントだけです。
ヒュープロは会計士の転職を専門に扱っていて、ファームごとの案件の状況や求められる年次まで把握しています。無料登録して聞くだけでも、応募の精度が変わります。
登録無料。案件の背景まで把握した担当者が答えてくれます
コンサルに向いている会計士・向いていない会計士
ここまで読んで、自分はどちら寄りだと感じたでしょうか。
向いていない側に多く当てはまっても、会計士としての価値が下がるわけではありません。
むしろ、腰を据えて同じ会社を見続けたい人は事業会社の経理で強いです。決まった手続きを積み上げるのが得意な人は、内部監査で信頼されます。方向が違うだけの話です。

面接で「コンサルは向いていないと思ったので事業会社を選びました」と言える人は、採用する側から見るとかなり信用できます。自分の輪郭が見えている人は、入ってからのミスマッチも起こしません。
会計士の内部監査・他の監査法人・独立タイミング

内部監査は、年齢の許容範囲がいちばん広い
やることが監査に近く、即戦力として見てもらいやすいので、40代でも動けるのがこの行き先の特徴です。
事業会社の実務経験がない段階でも入りやすく、そこから経理や経営企画に横移動する人もいます。時期は他の事業会社と同じで7月から9月が動かしやすいです。
他の監査法人へ移るなら、2年目以降の6月から8月
監査という仕事自体は嫌いではないけれど、クライアントの規模や進め方を変えたい。その場合は法人を移るだけで解決することがあります。
中小監査法人では一人が担当する範囲が広く、若いうちから全体を見られる環境もあります。逆に中小からBIG4へ移る動きもあり、こちらは通年で募集があります。
法人ごとの違いは『四大監査法人はどこがいい?BIG4の規模・年収・社風』の記事に、転職の全体像は『監査法人への転職は難しい?未経験・資格なし・年収』の記事にまとめています。
会計士の独立は、時期より準備の量で決まる
税務や記帳、コンサルティングで独立する道もあります。
修了考査を終えて実務経験を5年ほど積んでから、というのが目安になりますが、実際に決め手になるのは年次ではありません。仕事を持ってこられるかどうかです。

独立した会計士の方と何人か仕事をしましたが、うまくいっている人は例外なく、辞める前から声をかけてくれる相手がいました。時期を選ぶより、その関係を作るほうが先だと思います。
会計士は転職のタイミングを逃すと、何が起きるか

急かすつもりはありませんが、待つことにもコストがあります。
| 先延ばしにした期間 | 起きること |
|---|---|
| 半年 | 繁忙期をもう一周する。 判断できる時期がまた半年後にずれる。 |
| 1年 | 年次が上がり、求められる役割がプレイヤーからマネジメントに寄り始める |
| 2年 | マネージャー相当の求人が中心になり、募集の絶対数が減る |
| 3年以上 | 法人内での立場が固まり、外に出る動機そのものが薄れていく |
悪いことばかりではありません。残ると決めて納得している人は、それでいいはずです。問題なのは、決めていないまま3年が過ぎてしまうことです。

毎年6月に同じ相談をしてくる人がいました。3年目に「来年こそ」と言って、6年目にまだ同じことを言っている。悪いのは本人ではなく、確かめる手順を知らなかっただけなんですよね。
会計士の転職タイミングを間違えた5つのケース
うまくいかなかった話のほうが、たぶん役に立ちます。実際に見聞きしてきた5つの失敗を見てみましょう。
①繁忙期の最中に、勢いで退職を切り出した
4月や5月に退職を申し出ると、引き継ぎの時間が取れません。
結果として、有給を捨てるか、退職日を後ろにずらすかの二択になります。どちらを選んでも、最後の印象は良くなりません。
会計士の世界は狭くて、数年後にクライアントとして再会したり、面接の場で向かい合ったりします。去り方は思っているより長く効きます。

退職の申し出を受ける側から言うと、繁忙期に持ってこられるのがいちばんつらいです。本人を責める気はまったくないのですが、社内の調整が全部後手に回るんですよね。
②修了考査の要件を確認しないまま動いた
これがいちばん取り返しがつきません。
実務経験の要件を満たせるかどうかは、転職先で担当する業務の内容によって変わります。確認せずに移って、資格の完成が数年遅れた例があります。
③内定が出る前に退職を伝えてしまった
気持ちは分かります。ただ、順番を逆にすると交渉の材料を全部失います。
退職が決まっている人と、いまの職場に残る選択肢もある人とでは、条件交渉の場での立場がまるで違います。
それに、思ったより長く決まらなかったときに逃げ場がなくなります。内定を得てから伝える。これは守ったほうがいい順番です。
④年収だけを見て、入社時期を相手に合わせた
提示額が良かったので、先方の希望どおり2週間後の入社に合わせた。そういう話を聞いたことがあります。
その人は有給を20日以上残したまま辞めることになりました。金額に換算すれば、上がった年収の差分がほとんど消えています。

最終給与の計算をしていると、この「もったいない」が本当によく見えます。あと2週間ずらしていれば、と思う明細が毎年あります。
⑤『落ち着いてから』と言い続けて3年が過ぎた
いちばん多いのがこれです。
繁忙期が明けたら考えよう。修了考査が終わったら考えよう。この案件が片付いたら考えよう。監査の仕事には区切りが来ないので、この理由はいくらでも作れてしまいます。
動かないと決めるのは、まったく問題ありません。問題なのは、決めていないまま時間だけが過ぎることです。

毎年6月に同じ話をしていた人が、4年目に「もう考えるのをやめました」と言ったことがあります。すっきりした顔でした。決めるというのは、動くことだけを指すわけではないんですよね。
会計士の転職、動く前の3か月でやること

動く前の3か月でやること
5番までは在職中にでき、誰にも知られません(当サイト作成)
公認会計士の転職は順番を守るだけで、消耗がまるで違います。
| 時期 | やること | 在職中にできるか |
|---|---|---|
| 3か月前 | 就業規則の退職申出期限と有給の残日数を調べる | できる |
| 3か月前 | 修了考査の要件を協会と法人に確認する | できる |
| 2〜3か月前 | 求人を見て、いまの年次でどんな条件が出るか確かめる | できる |
| 2か月前 | 行き先を2つに絞り、職務経歴書に数字を入れる | できる |
| 1〜2か月前 | 応募して面接を受ける | できる |
| 1か月前 | 内定と条件交渉。入社日を退職日から逆算して決める | できる |
| 退職の申出 | 上長に切り出す。ここから引き継ぎと有給消化 | ここから |
上から6行目まで、つまり内定が出るところまでは全部在職中にできます。しかも誰にも知られません。
ここまで進めたうえで今の会社に残ると決める人も、実際にたくさんいます。それは負けではなく、材料をそろえたうえでの選択です。
退職を切り出したあとの手続きや、辞めたあとのお金の話は『公認会計士を辞めたい…辞めるべき人・残るべき人の違いと後悔しない辞め方』の記事に詳しくまとめています。

いちばんもったいないのは、何年も迷うことです。自分の値段を知らずに天秤にかけても、答えが出るはずがありません。
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監査法人に残った場合の5年後と、転職した場合の5年後

タイミングを考えるうえで、いちばん抜けやすい視点があります。動いた場合だけでなく、動かなかった場合の5年後も並べて見ることです。
| 監査法人に残った場合 | 3年目で事業会社へ | 3年目でFAS・コンサルへ | |
|---|---|---|---|
| 5年後の役職 | シニアスタッフ〜マネージャー | 経理の中核〜係長相当 | シニアコンサルタント相当 |
| 5年後の年収目安 | 800〜1,000万円 | 650〜900万円 | 800〜1,100万円 |
| 身についているもの | 監査の深さ、複数業種の横断知識 | 決算を作る力、社内調整 | 提案と実行、業種を超えた課題解決 |
| 次に動くときの選択肢 | 事業会社・FAS・コンサル・独立 | 経営企画・CFO候補・他社経理 | 事業会社の経営企画・CFO候補・独立 |
| 働き方 | 繁忙期の山は続く | 年間の予定が立ちやすい | 案件次第で重い時期がある |
| 失いやすいもの | 外を見る機会 | 監査という専門性の希少さ | 会計だけを深める時間 |
年収だけを見ると、動く理由は見つからない
動いた場合と残った場合の5年後(年収の目安)
3年目で動いた場合の5年後との比較。出典:マンパワーグループおよび転職エージェント各社の公開情報をもとに当サイトで作成(目安)
こうして並べると、どの道を選んでも帯が重なっているのが分かります。
だから、年収を主な理由にして動こうとすると、決め手が見つからないまま何年も過ぎます。逆に言えば、金額で大きく損をする選択肢もほとんどありません。
決め手になるのは、5年後に何ができるようになっていたいかです。

転職で年収が跳ねるのは、行き先を変えたときではなく、ポジションが一段上がったときです。担当者から課長候補へ、コンサルタントからマネージャーへ。そこを狙える年次かどうかが、実は最大の分かれ目なんですよね。
並べてみると、5年後の年収そのものは大きく変わりません。
変わるのは、そのときに手元にある選択肢です。監査法人に残った人は出口が広いままですが、外を見る機会は減ります。事業会社に移った人は働き方が安定するかわりに、監査経験の希少さが少しずつ薄れます。

人件費の表を眺めていると、5年前に入ってきた人と、5年前に出ていった人のその後が両方見えます。金額で差が付いているケースは、思っているより少ないんですよ。
転職エージェントは、いつ使い始めるのが正解か
順番の話でいちばん多い誤解が、これです。
辞めると決めてから登録するもの、と思っている人がとても多いのですが、実際には逆です。決める前に使うほうが、判断の材料が増えます。
求人を見るのに、退職の決断は要らない
求人票を見て条件を確かめるところまでは、応募も退職もせずに進められます。しかも会社に知られることはありません。
ここを済ませておくと、繁忙期の最中に「もう無理だ」と思ったときでも、感情ではなく数字で判断できるようになります。
登録が早いほど、いい求人に当たる確率が上がる
条件のいい求人は、時期に関係なく突然出て、すぐ埋まります。
見つけてから登録していたのでは間に合いません。先に登録だけ済ませて、条件に合うものが出たときに連絡が来る状態を作っておくのが、いちばん消耗しない進め方です。

登録して話を聞いただけで転職しなかった人を、僕は何人も知っています。それで誰も困っていません。むしろ、その人たちは残ると決めたあとの顔つきが違いました。
監査法人からの転職タイミングについてよくある質問
まとめ
長い記事になったので、大事なところをまとめます。
【この記事のまとめ】
・動く人が集中するのは、修了考査後の3年目前後、現場を回せる4〜6年目、マネージャー打診が見える7年目以降
・いちばん高く売れるのは4〜6年目。7年目以降はポジションが上がるかわりに求人が減る
・活動しやすいのは6月から9月。4月と5月は避ける
・動き出してから入社まで3〜4か月。逆算しないと想定より半年ずれる
・行き先6方向の年収レンジはほとんど重なっている。差が出るのはポジションと時期
・FASは監査の延長、コンサルは学び直しが必要。忙しさから離れたいなら両方とも向かない
・内定が出るところまでは、全部在職中にできて誰にも知られない
タイミングの正解は、年次や季節の表だけでは決まりません。あなたの経歴にいまいくらの提示が出るかが分かって、はじめて待つべきか動くべきかを比べられます。
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関連記事として、
・辞めるかどうかの判断と退職の実務は、公認会計士を辞めたい…辞めるべき人・残るべき人の違いと後悔しない辞め方
・事業会社に移ったあとの現実は、会計士が事業会社に転職すると年収は下がる?
・監査法人の激務の実態は、監査法人は激務?繁忙期の残業、BIG4と中小の違い、辞めどき
・年収の全体像は、監査法人の年収は高い?役職別・BIG4別・年代別の実態
にまとめています。

時期を選ぶことと、時期を待つことは違います。待っているうちに、選べる時期のほうが過ぎていきますから。

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